目の前で起きていることにうんざりして、首を横に振りながら吐き気を催している若者たちは、もうすでに寝そべっているのだ。
「寝そべり主義者のマニフェストThe Tangpingnist Manifesto」こと「寝そべり主義者宣言」。
ネットに転がってなくて探してたんですが。
和訳本があるとのことで即購入しました😂
「寝そべり主義者宣言」を読む
まずは松本哉氏の序文から。
頑張って国家や経済を強くするような方向性でもなく、かといってバリバリ反体制で悪政を倒して別の権力を打ち立てるみたいな方向性でもない。バカバカしいくだらない世の中の真っ只中で生活しながら、その実その社会に巻き込まれることを拒絶してのんびりやり出しちゃって、その生活スタイル自体が主張であり反乱でもあるという、完全に第三の方向性。そう、これは実は権力者や支配者側からしたら一番キツい。抵抗してきたらねじ伏せて屈服させ甲斐があるけど、そっぽを向かれたらこんな寂しくて無力に感じることはない。
この序文はおもしろい。
寝そべり主義は
「社会と戦うぞ~✊🥺」
ってノリではない。
- 「だる~」
- 「めんどくせ」
というスタイルです。
共産主義とかの思想を叩くのはかんたん。
- 「マルクスの理論はここがまちがっている」
- 「ソ連は失敗したじゃないか」
革命家を潰すのはかんたん。
「危険分子は社会の敵! 死刑! 閉廷!」
でも
- 「なんかだるい」
- 「どーでもいいや」
- 「なんもしたくない」
この「第三の道」をとりしまるのはむずかしい。
- 人間が持つ自然な欲求をねじまげることは難しい
- ただ寝そべってるだけの人を取り締まるのは法的道義的に難しい
中国当局もアタマをかかえてるんじゃないでしょーか😅
秘密の角度――寝そべることが立ち上がること
この世界を90度傾けるだけで、人々は普段口にすることのできない真実を知ることとなる。すなわち、寝そべることこそが立ち上がることであり、立つことは這いつくばるということである。この客観的実在性を持つ秘密の角度が、寝そべり主義者と国民の間の越えられない障壁となっている。
これは笑いました。
私もごろごろ生活してる半寝そべり族ですが。
あくせく働いていた社畜時代より、ゴロゴロしてる今の方が
「いきいきと活動している」
感覚があります。
社会秩序に従って自分の人生を生きないこと――
これではバリバリ仕事をしてようが、金を稼いでいようが
「死んでいる」
のです……💀
目指すは不労所得よりも「負債からの解放」
彼らは「寝そべって自由になろう」という言説を用いる、流行語をスムーズに金融商品を売り込むための売り文句へと再パッケージ化したのだ。この過労の時代に不労所得を得る(寝そべって金を稼ぐ)ことほど魅力的なことがあるだろうか。しかし寝そべり主義者たちはそれは誤った憧れだと感じているに違いない。多すぎる資産に悩み、いかに価値の維持を実現するか考えるよりも、寝そべり主義者はいかに自分名義の債務から逃れるかに関心を持っている。かつて、彼らが主流の秩序から与えられた任務をこなしていただけだった時、その先には必ず債務が待ち受けていることを感じていた。まるで返済するために生きているだけのようで、生きることがある種の負の資産であるかのようだった。――しかし、それは誰への負債だと言うのか? 彼らは徹底的に寝そべる姿勢によってこのシステマティックな身代金誘拐に対抗する時になって、ようやく正しい活路を見出したのである。これこそが寝そべり主義者が発見した真の自由なのだ。
「なにが寝そべり族でなにが寝そべり族ではないのか?」
ということがマニフェストではけっこー語られます。
「金持ちになってFIREしよう! 不労所得で暮らそう!」
というキャンペーンは寝そべり主義ではないことが示されています。
「不労所得でまったり暮らす」というより「負債からの解放」なのです。
私たちは生きているだけで「なにかの義務を負っている」感覚がある。
なにかを返さなきゃいけない――
- 子どもをつくる
- 仕事をする
- 親孝行する
- 納税する
そういった「負債」からの解放です。
「まるで返済するために生きているだけのようで、生きることがある種の負の資産であるかのようだった。」
これはすげーわかりますね。
寝そべることを選んだ瞬間、負債はバイバイです🥺👋
古くて新しい哲学
我々は意図的に作られた貧しさのなかで互いに争うのをやめる時だ。抵抗の哲学がまさに我々の行動によって復活しようとしている。その時、寝そべり主義者はより詳細で段階的な任務を制定しよう。それまでは、まず我々に木樽を作らせてほしい。
木樽はディオゲネスの木樽です。
古い哲学との関連もしめされています。
寝そべり主義って一種の思想史を受け継いだものでもある。
哲学といってもべつにむずかしくもない。
- 「俺は社会のいいなりにならないよ」
- 「自分の人生をいきるよ」
って感じ。
まあ老荘思想もそうだし、日本でも鴨長明とかそんなんでしょう。
一人の寝そべり主義者は最小の自治区であり、彼らの体はあちこちを漂う非正規の土地なのだ。
これもかっこいいフレーズです。
中国は政治的に不自由な国だとされているが、それでも自分の肉体は「非正規の土地」だと。
「行動も思想も自分の領土にしてしまう」
これが国家の理想ですが、寝そべり主義者は「ノー🙅」と拒絶する。
寝そべり主義者よ、団結せよ
この世界はとても険しい。寝そべり主義の身動きの取れない苦境から救い出し、それによって既存の秩序に対する大いなる拒絶を実現するには、個人主義ではない繋がりが肝心なのだ。
寝そべり主義は社会の一部箇所の孤立化が引き起こしたものではなく、すべての箇所で起こったものである。寝そべり主義はある社会階層とアイデンティティのコミュニティー間の決裂によって生じたものではなく、すべての労働者階級で生じたものである。寝そべり主義は試験と仕事、出産と結婚への拒絶を繋ぐ試みによって、既存の秩序のもとで大多数が抑圧されている世代そのものをまとめあげる潜在力を自然と獲得するようになる。
全世界の寝そべり主義者よ、団結せよ!
- 「働きたくね~🥺」
- 「寝そべっていたいわ🥱」
という感覚はすげーユニバーサルです。
寝そべり族は中国や日本だけでなくあらゆる国で話題になりました。
人間だけでなく「全生物共通」かもしれない。
猫ちゃんもワンちゃんもご飯が食ったらあとは寝てるわけです。
人間だけがあくせく忙殺されてるのです。
寝そべり主義はある意味人間から「自然」をとりもどす運動といってもいい。
それは団結によって「大いなる拒絶」になる。
抑圧された社畜たちを解放することになる。
ってわけ
「みんなで寝そべろーぜ!」
と締めくくられています。
終わりに
「けっこー読み応えあるな」
という印象でした。
薄い本ですが内容はこゆい。
まあ個人的には
「もっとゆるい感じでいいんじゃね?🙄」
と思いましたが……。
「命がけ」
だからしょーがないです。
中国ではこんなパンフレットを書くだけでポアされる危険があります😂
とーぜん力というか熱意がこもってる。
ともあれ寝そべり主義ってステキじゃないでしょーか?
- ただ寝そべること
- みんなで寝そべること
これが社会を変える強烈なインパクトになるかもしれません……😘
ここで買えます→『寝そべり主義者宣言・日本語版』(原題:『躺平主义者宣言』) | 素人の乱5号店
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